Ananda Intellectual Propertyはタイおよび世界中の商標保護に対応しています。
タイ国内での商標保護に関してよくあるご質問を以下にまとめています。タイでの商標出願ガイドをこちらからダウンロードできます。タイ商標法英語版はこちらからダウンロードできます。
タイでは商標法(Trademark Act B.E. 2543 (1991)、Trademark Act (No.3) B.E. 2559 (2017)改正)に基づき、商品商標、サービスマーク、認証商標、団体商標が保護されます。
タイで登録が認められるには3つの要件があります。識別性があること、法で禁じられていないこと、登録可能であること(先行登録商標と同一・類似でないこと)です。
識別性
タイ商標法上、次のいずれか1つ以上の特徴を有する標章は識別性があるとみなされます。
タイ国内で長年にわたり広範に使用されている標章は、上記要件を満たしていない場合でも識別性があるとみなされる場合があります。使用実績の観点から識別性が認められることになる商標については、出願人は商標を使用している証拠(宣伝広告、請求書、カタログのコピーなど)を提出する必要があります。
それ以外にも、識別性要件の審査に通過できない可能性のある標章については、商標構成要素のうち識別性のない部分の権利を要求しない、権利不要求(disclaimer)を提出することもできます。一般的には、「会社」などの一般的な語句や記述的な単語、あるいは「バンコク」のような地理的名称について権利不要求される場合があります。
当事務所の知的財産戦略策定の一環として、標章の登録可否について事前相談を承り、識別性要件をクリアするための助言を行っています。
法律で禁じられていないこと
一部の標章は商標法あるいは行政が定める規則に基づき明確に禁じられています。以下に例を挙げます。
Ananda Intellectual Propertyは、法律で禁じられた商標に該当するかについて事前相談を承っています。
登録可能性:(先行登録商標と同一・類似ではないこと)
商標法では、先行登録商標と同一・類似するマークの登録を禁じています。同一であることは簡単に確定できるかもしれませんが、類似の程度については、より微妙な判断が必要です。
登録可否の最終的判断は当局に委ねられていますが、マークの所有者はそのマークの有無を予め確認することで無用なトラブルとコストを回避するのが賢明です。
商標を出願する前に、同一商標調査、類似商標調査(タイ語の音訳商標を含む)、図形(ロゴ)調査を行うことができます。タイでその商標が登録可能であるかを判断する際には、保護を求める商品/役務の分類と保護を求める商品・役務について確認することが大切です。例えば食品と飲料に関する商標は、ケータリングサービスのサービスマークと同一・類似してはなりません。
また混同や類似のリスクを回避するため、そのマークの翻訳と音訳についても併せて確認することをお勧めします。
Ananda Intellectual Propertyの商標の専門家による使用可否に関する調査および相談(知財戦略プランを含む)を承っております。
タイでの商標出願要件は他国と同様です。ただし、商品・役務および分類および知的財産局に支払う公的手数料の計算についていくつか固有条件があります。
必要書類
タイでの商標出願には次の書類と情報が必要です。
多くの場合、Ananda Intellectual Propertyでは、必要書類の作成及び商標出願手続まで48時間以内に対応可能です。出願時に必要書類の一部が用意できない場合は、後日提出の許可を求めるお手伝いをします。
商品・役務の分類
タイは「商品及び役務の国際分類(ニース分類)」の一般的枠組みに従って商品・サービスリストを作成しています。ただし、いくつか重要なタイ固有の条件があります。
タイでは広範な商品・役務表示は認められていません。例えば、「clothing(衣類)」「cosmetics(化粧品)」は認められた表記とはならず、タイの商品・サービス分類に従って、「trousers(ズボン)」「Shirts(シャツ)」「T-shirts(Tシャツ)」などと詳しく記述する必要があります。商品・役務の表記を理由に登録を拒絶されるケースはよくあります。出願前に想定される拒絶理由を検討し、対処しておくのが得策です。拒絶は時に複雑で、出願審査の時間やコストがかさむ原因になります。
タイの分類表にはこの国独自の商品(ローカル食品など)が加えられています。
Ananda Intellectual Propertyは、商標出願前に商品・役務記載についてチェックし、助言を行います。
政府手数料
タイの政府手数料は、区分毎に、指定商品・役務の数毎に加算される仕組みです。但し、出願人が、各区分について5以上の商品・役務を指定した場合には、定額料金制となります。別の言い方をすれば、区分毎に6以上の商品・役務が指定された場合、一定額の政府手数料が発生します。.
なお、タイでは、多区分出願が認められてはいますが、政府手数料の金額は上述の方法を執ることにご留意ください。
商標検索
商標登録の出願前に先行商標検索を行っておくことを強くお勧めします。商標出願には9カ月程度かかることも多く、商標検索を行って商標の存在有無を確認しておけば、出願人が手続きを行う前に登録の可能性を見極めることができます。
商標を出願する前に、同一商標調査、類似商標調査(タイ語の音訳商標を含む)、図形(ロゴ)調査を行うことができます。混同または類似性のリスクを回避するため、その標章の翻訳と音訳を併せて確認することをお勧めします。
Ananda Intellectual Propertyでは24時間以内の商標調査が可能です。
優先権の主張
タイはWTO(世界貿易機関)の加盟国であり、パリ条約にも加盟しています。したがって、WTOあるいはパリ条約加盟国でなされた商標出願に基づき、最大6カ月間の商標優先権の主張が可能です。
商標代理人の指定
商標出願人または代理人はタイ国内に居所または事務所がなければなりません。出願人がタイ以外の外国居住者である場合は、タイ国内の代理人を指名し、公証委任状を提出する必要があります。
タイはマドリッド協定議定書締結国です。従って、商標の国際登録制度(マドリッド制度)に基づく、または国内居住者(指定国内商標代理人など)を介した指定ができます。
タイで商標出願を行う場合、登録に至るまでの平均所要期間は9~18カ月です。商標出願手続きには主に4つの段階(出願、審査、公開、登録)があります。
登録商標更新手続は10年間の存続期間満了日の90日前から可能です。更新しない場合には商標権が失効します。更新出願には、商品・役務に応じた政府手数料が課され、更新出願手続と同時に納付が必要です。
商標登録出願は、以下に説明するように、登録官による拒絶や、第三者による異議申立、あるいは特定条件に基づく取消を受ける場合があります。
拒絶通知
登録官は1通以上の庁通知を発行する場合があります。登録官は識別性欠如、周知あるいは先行登録商標と同一/類似、公序良俗に反する、法律で禁じられている、などの理由で出願を拒絶する場合があります。登録官の決定対し、不服を唱える場合は商標委員会に申し立てることができます。出願人は商標委員会の決定について知的財産裁判所にさらに提訴することもできます。
また、登録官から商標登録出願の補正を求められる場合もあります。補正命令の内容は例えば、商品・役務の記載、権利不要求、商標の意味、使用あるいは周知の追加証拠の提出要求などがあります。可能であれば、出願人はこうした補正命令に応じることをお勧めします。ただし、登録官からの補正命令に反論することも可能です。状況に応じて直接登録官に、あるいは、商標委員会に不服申立請求をします。
登録官は提出された補正書を確認し、それ以外に特に拒絶理由がない場合は商標登録出願の公告手続きを進めます。
異議申立
審査中の商標出願(公告されている未登録の商標出願)に対する異議申立の手続が設けられています。
商標出願は商標官報において公告されますが、利害関係者は、当該商標に対する自らの優先的権利を主張したり、当該商標が商標法に反している(公序良俗に反するなど)という理由に基づき、異議申立を行うことができます。こうした異議申立は、商標官報にその商標出願が公告された日から60日以内に理由を添えたうえで登録官に対して行います。
異議が申し立てられた場合、登録官は出願人に速やかに通知します。出願人は異議申立の副本を受領してから60日以内に登録官に答弁書を提出しなければなりません。
登録官は受け取った答弁書の副本を異議申立人におよそ2~3カ月以内に送付します。登録官は異議申立人または出願人に補足の答弁や書面での説明あるいは証拠の提出を命令できます。
そのうえで、登録官は出願人および異議申立人に書面で決定を通知します。出願人および異議申立人は通知の受領日から60日以内に登録官の決定に対する不服を商標委員会に申し立てることができます。商標委員会の決定については、決定日から90日以内に知的財産裁判所に提訴できます。
取消
商標法では、商標出願が登録が認められた後の取消手続には2通りの手続が設けられています。1つは商標委員会に対する取消請求(出願時に登録要件を満たしていなかった場合、登録商標が使用されていない場合など)、もう1つは知的財産・国際取引裁判所に対する取消請求です。
商標委員会
商標委員会に対する取消請求は、利害関係人あるいは登録官が、商標登録時に以下の状態であったと考えられる商標の取消命令を、商標委員会に対して請求するものです。
このほか、当該商標が社会秩序、道徳規範、公序良俗に反していると考える場合、何人も商標委員会に対して商標登録の取消を申し立てることができます。
申立人は商標委員会の決定に対する不服を、決定の日から90日以内に知的財産・国際取引裁判所に提訴できます。
知的財産・国際取引裁判所
知的財産・国際取引裁判所に対する取消請求は、利害関係人あるいは登録官が裁判所に対して、次のいずれかの方法で登録済み商標の取消命令を請求します。
タイでは登録商標の保護を維持するために使用の証拠を求められることはありません。
ただし、次の場合には、商標出願は、不使用を理由とした取消の可能性があるため注意が必要です。
不使用を理由にした商標の取消は極めてまれです。商標権者が営業上の特別な事情による不使用であることや、指定商品に対する商標の不使用の意思あるいは放棄の意図はなかったことが証明できる場合には、多くの場合、取消請求は棄却されます。
商標権侵害はこの数年、大幅に減少しています。タイは現在、米国スペシャル301条監視国から除外され、近年の法整備によってオンラインエンフォースメントが強化されています。
1997年に、権利侵害の被害を受けた商標所有者を支援する目的で中央知的財産・国際取引裁判所(IPIT Court)が設立され、同裁判所では現在、年間2,000件を超える商標権侵害訴訟が取り扱われています。
タイでは未登録商標、登録商標のいずれも権利行使が可能です。ただし、登録によって権利行使プロセスが加速されるうえ、コストも大幅に抑えられます。また登録には侵害行為の抑止効果も期待できます。
未登録商標
未登録商標所有者は、民事、刑事いずれの訴訟も起こすことができます。
民事訴訟は商標法および民商法典に従います。原告は差止命令を求めたり、あるいは、未登録商標の所有者に由来する商品の詐称通用を行った者に対し損害賠償を請求できます。
刑法典に基づく刑事訴追も可能です。ただし、実際の権利侵害や悪意が明確に立証されない限り、詐称通用の科料は少額であり、抑止効果はほとんど期待できません。
登録商標
登録商標の所有者には行政手続、司法手続の2通りの手段があります。
行政手続には、異議申立、取消、知的財産局を通じた裁判外紛争解決手続などがあります。
裁判外紛争解決手続はいずれの当事者も要求でき、侵害者と原告との調停が行われます。裁判外紛争解決手続は低コストの手続ですが、通常、原告は、刑事訴追を選択するため、利用されるケースはまれです。
司法手続には刑事訴訟と民事訴訟があります。
タイでの商標権侵害に関する権利行使の大半が刑事訴追です。刑事訴追は低コストで迅速、効率的な救済手段です。
刑事訴訟は警察への刑事告発から始まります。その後、警察が裁判所に捜査令状を請求し、令状が発行されると、権利侵害の証拠集めのために、警察の強制捜索が行われ、侵害者は逮捕されます。
タイには複数の法執行機関があります。
強制捜索の後、事案は知的財産・国際取引裁判所の検察官へと送られ、裁判所は、通常、検察官が裁判所に起訴してから1年以内に判決を下します。知的財産・国際取引裁判所の判決について、最高裁判所に上告することが可能です。
商標法では、商標権侵害に対する最高刑(4年以下の懲役または40万バーツ以下の罰金(あるいはその併科))が定められています。商標の模倣に関する最大罰則は2年以下の懲役または20万バーツ以下の罰金(あるいはその併科)です。
登録商標所有者は民商法典の定めに従い、民事訴訟を起こすことも可能です。ただし、商標権侵害の民事訴訟はタイでは稀です。多くの事案において損害の証拠提示は極めて困難です。戦略的には、民事訴訟は暫定的対策として有用です。例えば、登録商標所有者は裁判所に対し、権利侵害に関する証拠保全命令(アントンピラー命令)や差止請求を請求できます。
水際対策
水際対策は商標侵害物品や著作権侵害物品の輸出入(および特定条件に基づく輸送中の商品)に対してのみ有用です。
関税法が特許権侵害物品に対する保護まで網羅しているかについては未だ不透明です。商標所有者またはそのタイ国内代理人は税関に商標通知を提出し、侵害者の摘発を要求できます。また疑わしい積荷の留置の要求も可能です。押収の場合は、商標所有者が押収物の真贋を24時間以内に確認する必要があります。
このほか、税関職員は職権による取り締まりを定期的に行っています。税関には商標登録簿が備わっていないため、商標所有者が税関に対してタイ国内代理人の最新の連絡先を提供しておくことが重要です。これによって偽造が疑われる商品を遅滞なく調べることができます。
タイ税関は通常、権利侵害している侵害物品の市価に基づき、罰金を科します。
当事務所の弁護士はブランド所有者とタイ税関職員との橋渡しや、偽造品を見分けるための職員向け研修をお手伝いします。
Ananda Intellectual Propertyのスタッフはエンフォースメント活動に確かな実績があります。
登録官または商標委員会の命令により、または裁判所の審決に基づき、商標出願を補正する場合があります。場合によっては、出願人が自主的に補正することもあります。
例えば、その商標出願から商品またはサービスを削除する、連絡先を修正する、商標代理人を変更する、商標の意味(翻訳)を補足するなどの場合です。
出願人は、また、次に示すように商標出願の譲渡やライセンスの付与を行うことも可能です。