インダストリアルデザイン

タイ国内での意匠特許保護

伝統的手工芸と現代的創作性、双方の拠点であるタイは、さまざまなデザインプロダクトの生産国でもあり、消費国でもあります。創作者たちはタイのデザインにインスピレーションを受け、タイ市場での成功を目指します。商標権、著作権の保護に加えて、周到な創作者、知的財産権所有者ならば、可能なかぎり、意匠特許によってデザインを守るべきです。

タイ国内での意匠特許保護に関してよくあるご質問を以下にまとめています。タイで意匠特許保護を求める場合の手続きの流れはこちらをご覧ください。タイ特許法英語版はこちらからご覧いただけます。

タイでは国内、国外いずれの出願人にも、意匠特許がよく用いられています。意匠特許の目的は、形状、構造、模様などに関わる特徴など、その物品の装飾的または外観的特徴を保護することです。

タイの特許法では、1つの意匠ごとに1つの意匠特許出願を行います。従い、模様配置のバリエーションなど、1つの意匠に対して複数の実施形態の保護を求める知的財産所有者は、それぞれの実施形態について個別の出願を行う必要があります。

出願時には二次元と三次元について複数の角度からの意匠の描写を提出します。前面図、背面図、右側面図、左側面図、底面図、上面図、斜視図などです。

これらの図は物品の図面でも写真でもかまいません。


携帯電話用ケースに応用されたクロックスシューズデザインと実際の商品

特許による独占によってもたらされる商業的成功による潜在的収益にふさわしく、意匠特許保護の要件は著作権保護に比べて厳格です。

タイでの意匠特許保護には2つの要件があり、それは「新規性」と「産業上の利用可能性」です。

知られ使用されるものではないこと、です。さらに、出願日前に国内外にて、当該意匠が開示あるいは出版物公知となっている場合にも、新規性は認められません。

意匠は、64条及び28条に基づき、登録される前に公開されます。

タイの特許審査官は産業上の利用可能性を幅広く解釈するため、この要件は通常、簡単に満たすことができます。手工芸品、農業、商業を含め、いずれかの産業で生産または使用されていれば産業上の利用可能性があるとみなされます。ただし、産業には影響がなく学術的または理論的応用性のみある発明はこの要件に照らして十分とはみなされません。

下図に、タイで意匠特許を国内出願する際の大まかな手順をまとめています。
意匠特許出願に関して、タイでは実体審査が行われるため、出願時に新規性要件を必ず満たす必要があります。

意匠特許登録手順(概略)

現在、タイには部分意匠制度はありませんが、国内経済における意匠の重要性が増していることを考えると、将来的に部分意匠の保護を認める法改正が行われる可能性はあります。

タイは、現時点で意匠の国際登録に関するハーグ協定(ハーグ協定)の加盟国ではありません。ハーグ協定は、特許に関するPCT国際出願制度に類似する、世界知的所有権機関(WIPO)を通じた意匠保護登録のための国際出願制度です。2021年に見込まれる特許・意匠特許法改正の一環として、ハーグ協定への加盟も見込まれています。